(感想)ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第12話(最終回)「蒼穹ニ響ケ」
第12話(最終回) 「蒼穹ニ響ケ」
【キャスト】
・カナタ 金元寿子 ・ユミナ 福圓美里
・リオ 小林ゆう ・マリア 戸松 遥
・クレハ 喜多村英梨 ・マルティン 松岡大介
・ノエル 悠木 碧 ・アーイシャ 宮原永海
・フィリシア 遠藤 綾 ・ホプキンス 内田直哉
・クラウス 石塚運昇 ・兵士1 高橋研二
・ナオミ 八十川真由野 ・兵士2 松尾大亮
・ミシオ 高橋まゆこ ・兵士3 岩崎正寛
・セイヤ 平田真菜 ・司令官 田久保修平
【スタッフ】
・脚本 吉野弘幸
・絵コンテ 神戸 守
・演出 神戸 守
・作画監督 赤井俊文
【あらすじ】
敵国の兵士を匿ったことで、反逆の罪に問われたカナタたち。
しかしそれでもカナタたちは、自分たちが正しいと信じる道へと進みます。
両軍が睨みあい、開戦間近の緊張した空気が漂う国境付近。
開戦を阻止するため、小隊メンバーが取った行動とは――!
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総じて素晴らしかった!!
今期でじぶんなりにもっとも期待していた作品、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』
最初に言っておきます。まったく期待を裏切らないでくれた、と・・・。
総括的なことはおそらく書くであろうまとめ的なもので書かせていただくと思う。
※『蒼穹ニ響ケ』
前回の最後の銃声、あの凶弾に倒れたのはアーイシャだった。しかし彼女を貫
いた弾は、幸いにも内臓には傷をつけてはおらず、かろうじて一命を取り留めた。
その頃、フィリシア少尉はホプキンス大佐に拳銃を突きつけ拘束した。拘束され
た大佐は、ノエルの過去、すなわち「見えない死神」こと旧時代の生物兵器のプラ
ントを彼女が再生させたことを語り、"盟友"に自分の下へ戻るように言う。その
大佐の言葉に過去の記憶がフラッシュバックし、震えがとまらないノエルをかば
い、かつ彼の口を封じるため、威嚇射撃を躊躇いなくするフィリシア少尉。
フィリシアが大佐を拘束するという展開が予想を超えていた。少尉が近衛師団
を率いてきた司令官である大佐を拘束するというのがどれほどのことかと考える
と正直、当事者でないじぶんでも身震いがする。軍法会議ではほぼ死刑は免れな
いどころか、下手をすれば小隊規模での極刑レベルである。しかし彼女はやって
のけた。それは自身がかつて味わった悲しみを、戦争によって味わった仲間達が
死んでいくという悲しみを、カナタ達に与えたくはないという決心・覚悟、そし
てリオは必ずこの戦争を止めてくれる、と両軍が開戦寸前でも信じてやまない信
頼があったからであろう。そんな、フィリシアの心の弱い部分から生まれた強い
面、そして人物像がしっかりと現れている場面だったと思う。
ヴィネンラント戦線において、"凶意的"な殺傷能力を誇った旧時代の生物兵器
「見えない死神」を復活させてしまったノエル。彼女は、子供の頃、利用されてし
まっただけとはいえ、未だにそれを悔い、苦しんでいた。だから精霊流しのとき
も、自身の再生させたものによって死んでしまった人たちに顔向けができない気
持ちがあり、ひとりだけそれをしなかったのだろう。
この場面で、フィリシアとノエルふたりの過去、人物像、心情などをすべて再
確認し、総括していたと思う
べらべらと話す大佐を隔離すべく、地下に放り込んだまではよかったが、その
後、彼は脱出する。そして部隊へと帰還し、攻撃命令を発しようとした時、砦か
ら白旗を掲げたナオミが軍使としてカナタが聞いたという停戦信号の事実を伝え
に行く。しかし、大佐は聞く耳を持たずに彼女を拘束してしまったのであった。
大佐がこのときナオミに言った言葉、"戦争こそが文明と科学を推し進める"と
いうのは決して間違ってはいない話だ。彼はただ単に戦争をしたいだけだ、とも
考えられるが、少しだけ彼の肩を持つとするならば、彼は"人類の栄光の奪還"を
大義名分の掲げて自身の信念を貫こうとしている。彼なりの正義、それが戦争な
のである。悲しきかな、間違いでないゆえに"間違いを犯していること"に気が付
けないのが戦争なのである。彼は典型的な軍人である。
今まで何かにつけて"私達は兵隊だ"、"私達は任務を全うしなければならない"と
言ってきていたクレハ。そんな彼女を"かっこつけて兵隊ごっこをしている"なんて
心無い評価をなさっていた方々もおられたことだろう。じぶんは今、"心無い"とは
書かせていただいたが、その意見もまた正しいと思う。じぶんとしては、彼女が根
がとっても優しいというのを常に頭において見て、聞いてきたからそういう考えは
しなかっただけで、お年頃のじゃじゃ馬的な感じにも見れるクレハを、そう頭にお
いて見ていればおそらく"兵隊ごっこ"と見るのが正しいだろう。結局なにが言いた
いのかというと、すごく間抜けな結論なのだが、どちらとも正しいというのは。や
はりクレハは最年少で、こども的に純粋なのだということを言いたい。なぜそう言
うのか?つながりが分からないぞこの野郎という方もいらっしゃるだろうが、その
辺りの理屈はもう省略する。この場面で、クレハの人物像、心情を表にすべてあら
わしてきたのだろうとじぶんは思っている。
覚悟を決めたフィリシア以下、第1121小隊の乙女達。彼女たちがとった行動、そ
れはノエルによって現代によみがえった旧時代の技術の結晶・タケミカヅチを起動
させ、その機体を持って戦場とならん場所へ向かい、直接停戦信号を伝えるという
ものだった。対してそれを阻止しようと戦車部隊を出動させようとしたホプキンス
大佐を阻んだのがセーズの市民たち。ここを通りたければ自分らを倒してから行け
という言葉に、大佐も迂回を余儀なくされた。そして大佐率いる数台の戦車部隊と
交戦し、勝利するタケミカヅチ。彼女らの思いを乗せて、タケミカヅチが戦場とな
らん場所の中心へと降り立つ。
ついにノエルの修復したタケミカヅチが動いた。タケミカヅチ自体は第7話にお
いて動いている姿をわずかだけ見たが、今回は行軍している姿も見れた。単刀直入
に言ってすごく奇怪な、というか気持ち悪い動きだった。だが、新時代、つまり今
の時代の近衛師団の戦車と比べると、やはり機動性の違いを構造から見ることが出
来る。4本の脚が平行移動のようにしか動かないのに対し、タケミカヅチは関節の
ロック解除があるように、関節を持っているために、極めて細かい動きまで出来る
素晴らしい機動力を持っている。スピードに関しても桁違いであり、新時代の戦車
では追いつくことはまず不可能だと思われる。そしてなんといってもレーダー照準
射撃&自動装填だけあって攻撃力がずば抜けている。今回も見事に近衛隊戦車の脚
だけを主砲で速射・狙撃するというのをやってのけた。最後に、驚異的な防御力だ。
近衛戦車数台の射撃をもろに食らい、止めでは大佐の乗る戦車にゼロ距離射撃を食
らっても、さしたるダメージが見られないというレベルである。いかに旧時代と新
時代の技術力に差があるかが見て取れる場面だ。ここまで違うとなると、大佐の気
持ちがわからないでもない気がしてきた。
戦争を嫌い、カナタ達を止めようとするホプキンズ大佐を阻む市民たち。彼らは
2年前の悲劇をまだ忘れることなど出来るわけもなく、そんな悲劇が繰り返されよ
うとしているのを体を張って食い止めようとしている。その市民の姿に、さすがに
殺してまで進撃をしようとしないホプキンス大佐は"ヴィネンラントの鬼神"ではあ
るが、"鬼畜"ではないようだ。ここで本格的な悪ならば市民を殺してでも進撃した
だろう、だが彼は迂回を選んだ。やはり彼は単に"人類の栄光"を目指しているだけ
なのではないか?悪では決してないのではないだろか?彼の"正義"がこの場にいる
多くのものと食い違ってしまっているだけなのではないか?そんな気がしてくる場
面だ。・・・いけない、勝手に大佐の株がじぶんの中で上がりかけている。
ローマ軍に対峙して展開している戦時第1・第3師団と近衛第1師団第9独立
機動部隊。部隊の中にはかつてカナタにキャラメルをあげていた軍曹殿の姿もあ
った。そんな彼らに現場司令官から下される突撃命令。たとえ少女だろうと戦争
に嫌応なしに巻き込まれる、"それが兵隊だ"と半ば諦めな彼ら。そんな中の突撃
開始後、突如両軍の真ん中に現れる"1121"の番号と"隊旗"が入っている見たこと
のない機械。カナタ達は間に合った。そして彼女らは旧時代の傷跡でもある倒れ
た廃墟に上り、その上でカナタは停戦信号を吹き鳴らす。しかしすでに突撃を開
始した部隊を止めるには至らず、もはやこれまでというときに戦場に響き渡る"
アメージング・グレイス"
それは、カナタが奏でる、ソラノヲトだった。
兵隊だからといって、戦争を熱望しているわけではない。だが兵隊だからとい
って、平和ばかりを常に考えているわけでもない。兵隊にはざっと分けて2種類
がいる。そしてこの話でも、2種類の兵隊・軍人が出てきている。そういったこ
ともさりげなく描いているところが脚本的に抜かりはないと思う。
カナタの奏でるアメージング・グレイスによって両軍の動きが止まる、これは
正直予想どおりでした。たしかにカナタはとても重要な働きをしました。しかし、
戦争を未然に防ぐ決定打となったあくまでリオの働きでした。彼女がローマ皇帝
と婚約したことによって講和がなったわけですので、最後は"カナタ"だけでもな
く"リオ"だけでもなく、"カナタとリオ"によってこの戦争は未然に防げたと考え
られます。
"音は響く、そして伝わる"
イリア公女の妹であり、彼女からラッパを教わったリオ。
イリア公女の奏でるラッパに魅せられて今ここにいるカナタ。
ふたりの始まりは同じであり、そして始まりであるイリアの願いをふたり揃って
初めてかなえることができた。これはきっと偶然ではないでしょう・・・。
近衛第1師団本隊を率いて勅命を告げにきたリオ。これによって危機的状況は
回避され、両軍兵士は歓喜をあげるのであった。そして時は流れ、春の香りが
ただよい始めたころ、砦に新たに配属されてきた者、彼女は・・・。
「本日付で第1121小隊への編入を命じられたリオ=カズミヤ=アルカディア少尉です」
ローマ皇帝が話の分かる人物だったらしく、婚約者であるにも関わらず辺境の部隊
への復帰を認めてくれたらしい。これはかなりの誤解をヘルヴェチア側がしていた
ということではないだろうか?こんなに話がわかる皇帝、なかなかいないと単純に
そう感じた。なにはともあれ、また5人そろっての、賑やかな日常が戻ってくる。
そんな彼女たちの笑顔が戻ってくるのだなという事実が、見ているこちらにも伝わ
り、そして嬉しくさせる。

この作品においては、決まった見方や評価というものはないと強く感じる。
戦争物と考えて、特に大したエピソードがないことにがっかりするのもよし、
平和的な日常話の物語としてほのぼの見てきてよかったというのもよし、誰
かが何か感想を言えば、それが真実なんだと思う。
逆に言えば、すべてが真実になりえる作品ということが、この作品の根本的
な部分での素晴らしさをあらわしていることだろう。ほかに関して、ここは
こうだああだと言う気なんてまったくじぶんはないし、その権利もない。た
だ、この根本的な部分での素晴らしさというのだけはなんとしても認めてい
ただきたいと切に思っている。
最後に、じぶんのこの作品の感想を一言叫んで、締めとさせていただきたい。
本当に素晴らしい作品でした!
ありがとうございました!
<今までに書かせていただいた感想記事>
・第1話「響ク音・払暁ノ街」
・第2話「初陣・椅子ノ話」
・第3話「隊ノ一日・梨旺走ル」
・第4話「梅雨ノ空・玻璃ノ虹」
・第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」
・第6話「彼方ノ休日・髪結イ」
・第7話「蝉時雨・精霊流シ」
・第8話「電話番・緊急事態ヲ宣言ス」
・第9話「台風一過・虚像ト実像」
・第10話「旅立チ・初雪ノ頃」
・第11話「来訪者・燃ユル雪原」
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